危険な目の打撲『吹き抜け骨折』


休日に野球を楽しんでいたNさん、飛んできたボールが目にまともにぶつかってしまいました。痛くてベンチで休んでいましたが、1時間たっても目のかすみが治らず、眼科を受診しました。
眼球の打撲は非常に危険な外傷で、眼の表面、眼球の中、眼のまわり、眼の奥と、いろいろな場所に障害をおこすことがあります(図1)。
その中でもこわいのが、眼球の周りの骨折です。眼球は7つの骨からなる眼窩(がんか)と呼ばれるくぼみの中に納まっています。これらの骨は非常に薄く、ちょっとした衝撃で簡単に折れてしまうことがあります。
眼球の奥の骨が折れたとき、視神経をまきこむと視神経が障害され、それだけでも失明の危険があり、眼球の下を支える骨が折れてしまうと、『吹き抜け骨折』といって、眼球が下に落ち込んでしまいます(図2)。
さらに、眼球を動かす筋肉を巻き込んでしまうと、眼球を見たいものの方向に動かそうとしてもうまく動かせなくなり、『複視』といって、ものが二重に見えてしまう症状が出たりします。特に野球のボールの大きさは、眼窩のくぼみにちょうどはまるため、吹き抜け骨折を起こしやすいと言われています。
Nさんは幸いにも骨折はなかったようですが、眼の中の炎症(虹彩毛様体炎)と、眼底の網膜の打撲症(網膜振盪症)のため、見えにくくなったのだと説明されました。
Nさんは点眼薬の治療で見やすくなり、数日後には野球の許可もでて、元気にグラウンドに出るようになりました。目に何かをぶつけた時は痛くなくても、ぜひ早めに眼科を受診しましょう。